Amazonプライムの『TRUE DETECTIVE/迷宮捜査』(『TRUE DETECTIVE』のシーズン3)が面白かったので、その感想を書いておきます。

 

 

アメリカ南部アーカンソー州で起こった幼い兄妹の失踪事件を、
1980年(主人公が35歳)、1990年(45歳)、2015年(70歳)という三つの時代が同時進行する形で描く・・・というドラマ。

 

アメリカがこんないいドラマを作るようになったとは・・・。

もう20年も前に映画通の友人が
「ハリウッドの映画って薄っぺらくてバカみたい・・・」って言っていたのを覚えている。
そのアメリカがねぇ。。。

このドラマの脚本のすばらしさに加えて映像や選曲のセンスの良さ!俳優陣も素晴らしい!
シーズン1の方が色々衝撃的で面白かったけれど、
私の好みとしては、こちらのシーズン3の顛末の方がじんわりきた。

 

 

第一話で、後に主人公の妻となる女性が
ロバート・ペン・ウォーレンの詩「Tell Me a Story」を朗読する場面がある。
この詩がこのドラマ全体の通奏低音(ドローン)とでもいうのだろうか、
この詩を基調としてドラマが展開していく。とても印象的な詩で惹き込まれる。

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Tell me a story. (物語を聞かせてくれ)
In this century, and moment, of mania, (熱にうかされたこの時代、この瞬間を)
Tell me a story. (物語を聞かせてくれ)
Make it a story of great distances, and starlight. (はるか遠いかなたの星明りの物語を)
The name of the story will be Time, (その物語に名を付けるなら「時」)
But you must not pronounce its name. (だがその名を声にしてはならない)
Tell me a story of deep delight. (深い歓喜の物語を聞かせてくれ)

 

20200114 Tell me a story.

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(ネタばれ↓)

 

迷宮入りした未解決事件にこだわり続ける元刑事の老人。
彼は老人性の記憶障害を患っている(いわゆる“まだら〇ケ”の状態)。
彼の亡き妻の書き遺したこの事件の小説を丁寧に紐解きながら、
当時事件解決に一緒に取り組んだ相棒に助けを求め(そっちだって老人になってる)、
失われていく時と記憶の中で、じっちゃん二人でよたよた事件の軌跡をたどるのである。

人間ねぇ、長く生きていれば、心残りや後悔のひとつふたつなんて誰にだってある。
時折振り返ったって「もうどうにもならない」という諦めのもとに日々を過ごしていたりするよね。
それをね、もう一度丹念に丹念にもうボケた頭をフルに働かせて、
なんとか事件を解明しようとしている爺様の姿を見ているとね、

それだけでなんだか泣けてくるんです(´;ω;`)ウゥゥ

 

なんかうまく説明できないけれど、
アラフィフ以降の年代の人たちだったらきっとわかってくれるよ、うん。

 

 

そんで、
幼い兄妹の兄の方はドラマの最初の方で死体で見つかって、
妹の方は監禁されていた場所から逃げ出すも、
逃亡先を転々とするうちにHIVに罹り身を寄せた修道院で亡くなる、というのが事件の結末となる。

 

もう仕方ないよ、ふたりとも頑張ったよ、それでいいじゃん。

 

と、その亡くなった妹の墓標の前に佇む画面の爺様二人に私は精一杯の慰労の拍手をおくり
それでエンディングかと思いきや、
主人公が書斎で事件の書類の片づけをしていると亡き妻が若い頃の姿で、
「・・・・Tell me a story・・・」
の声とともに現れる。
(記憶障害であっちこっちと記憶が飛んでいるのでこんなシーンがよく出てくる。記憶障害って設定はうまかったと思うよ)

 

「事件のエンディングが本当のエンディングでないとしたら?」

 

と妻は主人公に語り出し、
逃亡した少女が匿われた先の修道院で人生を取り戻し、そこで愛や信頼を得た可能性を示唆する。
修道女たちは追われ続けている少女の身の安全を図るために少女の死を工作した・・・、
というstoryに驚き当惑する主人公に妻の幻影は語り続ける。

 

another story(まったく別の話)が存在する・・・
・・・・それは途切れることなく続くstory、
多くのものが失われつつもそれは前進を続け、そして自ずと癒されていったとしたら?

 

 

妻が明かした少女のstoryを見届ける為に、
主人公は妻が教えてくれたヒントから生き延びている少女の所在を探し出し車で向かう。
目的地にたどり着いたはいいが(途中でまたボケて)、
生きていたかつての少女(今は幸せそうな一児の母)を目の前にどうして自分が今ここにいるのかわからず困惑するのみで、
結局「道に迷った(I’m lost.)」と息子に携帯で連絡し迎えに来てもらい帰宅する。

 

 

世の中には癒しが必要な人、癒しを求める人に満ちていて、
セラピストの私は力及ばず、ってがっかりすることもあるんですが
(それでも私はホメオパスとしての成績はいい方だと思う)、

そっかー、自然と(勝手に自分で)癒されるってこともありなんだー。:.゜ヽ(*´ω`)ノ゜.:。

これは全セラピストへの応援歌か?と、なんだかジーンときたんですよ。

 

 

・・・とまぁ、ちょっとふざけて書いちゃったけれど、
これは全ての人々への救いのメッセージでもある思うのです(未解決事件の被害者の家族の方も含めて・・・)。
物語が続く限り、私たちが物語を作り出すことが出来る限り、
人は自分自身で癒す力を持っている。だから人は(世代を引き継ぎながら)生き続けるんです。
たとえ多くのものが失われても、ね。

 

 

最後は若き主人公がベトナムの森の中を彷徨っているシーンで終わる。
これは彼の記憶・・・彼が抱えているstoryのひとつなのだろう。
彼はベトナム戦争に従軍した兵士で、
多くの帰還兵はPTSDを患うと聞くが、それほど酷い症状に至らなくても、
その後の人生に暗い影を落とすことが多いという。
このstoryもいつか自然と癒される時が来るのだろうか、そうであって欲しい、という願いを観客に抱かせてこのドラマは終わるのである。

 

・・・ええ話や ☆:*:・。゚(゚ノД`゚)゚。・:*゜☆.

 

 

 

このドラマの主なテーマは「時」と「LOST」かな。
他にもいくつものテーマを内包している重厚なドラマでした。
あー、楽しかった。

 

 

以上。

 

 

Amazonプライムいいよぉ。

 

では。